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向上心のある20〜40代の皆様、いつも当ブログをご愛読いただきありがとうございます。私たちは日々、「変わりたい」という漠然とした願望を抱きながらも、なかなか一歩を踏み出せない、あるいは行動しても元の自分に戻ってしまうという経験はありませんか?例えば、新しい習慣を始めようと決意しても、いつの間にか三日坊主になっていたり、現状に不満を感じつつも、結局同じ毎日を繰り返してしまったり。

実は、この「変わりたいのに変われない」という悩みには、脳と心の仕組みが深く関係しています。今回は、脳科学に基づいたアプローチで、私たちの行動を司る「無意識」を味方につけ、新しい自分に出会うための具体的な方法を、認知科学コーチングの視点から深く掘り下げていきます。読み終えた後には、きっと「これならできる」という確かな手応えを感じていただけるはずです。

変われないのはなぜ?変化を阻む「ホメオスタシス」の正体

私たちは「変わりたい」と強く願う一方で、なかなか変わることができないと感じる瞬間がありますね。その背景には、人間が生まれながらにして持つ、非常に強力な本能が働いています。それが**「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」**です。ホメオスタシスとは、環境が変化しても体内の状態(体温や血糖値など)を一定に保とうとする仕組みのこと。興味深いことに、この本能は私たちの意思決定や選択にも大きな影響を与えています。

例えば、私たちは無意識のうちに、いつも同じ朝食を選んだり、同じ美容室に通ったり、慣れ親しんだ場所に住み続けたりと、変化を避けて同じ選択を繰り返しています。この「慣れ親しんだ安全な領域」こそが、心理学で言う**「コンフォートゾーン」**なのです。私たちが「今日からジムに通うぞ!」「毎日読書するぞ!」と意気込んでも、ホメオスタシスは常に働き、私たちを「いつもの快適な状態」へと引き戻そうとします。ゲームをしたり、家に引きこもったり、ベッドでスマホをいじったり…結局、元の行動に戻ってしまうのは、このホメオスタシスの強力な作用なのです。

では、なぜ人間はこれほどまでに現状維持を望むのでしょうか?その理由は、人類が狩猟採集生活をしていた時代に遡ります。新しいことに挑戦して命を危険に晒すよりも、変化を避け、同じ生活を繰り返す方が生き残る確率が高かったからです。この原始的な機能が、現代の私たちの中にもまだ色濃く残っているわけです。もちろん、今の時代は些細な変化で命を落とすことはありませんし、むしろ成長するためには新しいことに挑戦すべきですが、ホメオスタシスが強力すぎて、ほとんどの人は変化したくてもできない状態にあるのです。私たちは、リストラや転勤、結婚や離婚、あるいは災害など、外部から強制的な変化がもたらされる時くらいしか、大きく変わることができない生き物なのかもしれません。

行動の95%は無意識が決めている?脳の驚くべき仕組み

「変わりたいのに、なぜか行動できない」という私たちの悩みの根底には、もう一つ、脳の驚くべき仕組みが隠されています。それは、私たちの意思決定の95%が「無意識」によって行われているという事実です。ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授ジェラルド・ザルトマン博士の研究によると、意識的に行われる意思決定はわずか5%に過ぎないとのこと。私たちは、残りの95%の無意識に操られながら、日々さまざまな選択や行動をしているのです。

なぜ脳は、これほど多くのことを無意識に処理するのでしょうか?その理由は、私たちが1日に約9000回もの決断をしていると言われているからです。もしその全てをいちいち意識して深く考えていたら、脳はパンクしてしまいます。そのため、脳は効率化のために、ほとんどの意思決定を無意識で自動処理しているのです。

このメカニズムが、私たちの変化を阻む大きな要因となります。例えば、「今日からダイエットするぞ!」「勉強するぞ!」と5%の意識で強く決意しても、95%を占める無意識が「今のままでいいや」と考えていれば、結局私たちは元の生活に引き戻されるような選択をしてしまいます。成功している人たちは、無意識のうちに成功できる選択や行動が取れる人たちだと言われています。逆に、うまくいかない人たちは、無意識のうちに失敗する行動を選んでしまっているのかもしれません。しかも、無意識であるがゆえに、本人はそのことに全く気づいていない場合がほとんどです。

あなたの「無意識」はどこから来るのか?2つの要素を解き明かす

私たちの行動の95%を支配する「無意識」は、一体どのように形作られるのでしょうか?実は、人によって無意識の選択に大きな差が出るのは、この無意識が**「先天的」なものと「後天的」なものの2つの要素**で構成されているからです。

まず、先天的な無意識とは、私たちが生まれつき持っている気質や性格、明るさ、勤勉さ、やり抜く力といったものです。例えば、生まれつき行動的な人や、内向的な人がいるのは、この先天的な違いによるものと言えるでしょう。残念ながら、この先天的な部分は変えることができません。

しかし、希望があります。もう一つが後天的な無意識です。これは、私たちが0歳から21歳までに、周囲の環境や人間関係を通して身につけた「思い込み」や「信じていること」によって形成されます。例えば、親から褒められるよりも欠点を指摘され続けた子どもは「自分はダメな人間だ」と信じ込むようになるかもしれません。人前で笑われた経験がある人は「自分は人前に出ない方がいい」と思い込むようになるでしょう。逆に、学生時代に異性からモテモテだった人は「自分は愛されて当然だ」と信じられるかもしれませんし、拒絶され続けた人は「自分には愛される価値がない」と信じてしまうようになるかもしれません。

かの有名なアインシュタインも、「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションである」と述べています。つまり、私たちは生まれ持った気質と、幼少期から青年期にかけての経験で形成された「思い込み」をベースに、大人になってからも様々な選択や行動をしているのです。

もしあなたが今の自分を変えたいと願うのであれば、この自分の人生を形作っている「無意識」、特に後天的に形成された思い込みを理解し、書き換えることが極めて重要です。後天的な無意識は、時間はかかるものの、変えることが可能です。無意識が変われば、自ずと選択や行動が変わり、その結果として人生を変えることができるのです。

「変わりたい」を現実にする!認知科学コーチング4つのステップ

ここまでで、私たちがなぜ変われないのか、そして無意識の仕組みがどのように私たちの行動を支配しているのかを理解いただけたかと思います。ここからは、いよいよ「変わりたい」というあなたの願いを現実に変えるための、具体的な4つのステップをご紹介します。

ステップ1:あなたは本当に変わりたいですか?

最初のステップは、シンプルでありながら最も重要な問いです。あなたは今のままで生きていくのか、それとも今の生き方の「外側」に行くのかを、自分自身で決断することです。変化には、苦しさや困難を乗り越える場面が必ず訪れます。それはまるで、一人で海外に引っ越したり、見知らぬ人に声をかけたりするような、不安を伴う行為です。もし今のままで十分だと感じるなら、ここでやめても構いません。これは誰かに強制されるものではなく、あなた自身の純粋な意思が問われるからです。しかし、もしあなたが本気で「変わりたい」と願うなら、次のステップへ進みましょう。

ステップ2:無意識の「癖」を知る自己理解

次に、あなたはこれまで無意識にやってきた**「自分の癖」を意識化すること**に挑戦します。なぜなら、無意識は気づかれていないからこそ、強力な力を持っているからです。直したい習慣があるのなら、まずはそれを意識する必要があるのです。

著者は、自分の無意識の行動や選択を理解することこそが「本当の自己理解」だと述べています。ここでは、以下の3つの質問に対する答えを、頭で考えるのではなく、これまでの自分の行動を振り返って明確にしてください。

  • 自分が無意識に避けてしまうこと
  • 誰かに止められても、ついやってしまうこと
  • これをすればうまくいった、という経験

私たちが95%の選択や行動を無意識で決めていることを思い出してください。本当に好きなことはすでに無意識にやっているはずですし、本当に避けたいことはすでに逃げているはずです。例えば、腕時計が好きなら無意識に腕時計のサイトを見ているでしょうし、結婚したいのなら気づけば婚活サイトを見ているはずです。あなたの過去の行動の中に、答えが隠されています。

ステップ3:未来を「リアルに」描くゴール設定

自己理解の次に重要なのが、**「ゴール設定」**です。ここで設定するゴールは、「今の自分が変わらないと絶対にたどり着けない」ものでなければなりません。なぜなら、高い目標に挑戦するからこそ、私たちは自分の殻を破り、大きく変わることができるからです。

重要なのは、そのゴールが「達成できるかどうか」を気にしすぎないことです。達成可能性ばかりを気にしていると、現状の延長線上ではない、本当の意味で「今の生き方の外側」にゴールを設定することができなくなってしまいます。

そして、最も重要なのは、そのゴールに「臨場感」を持てるかどうかです。臨場感とは、実際にその場にいるかのようにリアルに感じられること。つまり、あなたがそのゴールを達成している姿を、まるで現実のように鮮明にイメージできるかということです。最初はぼんやりで構いません。「こうなったらいいな」「こんな自分だったらワクワクするな」という理想の自分を思い描いてください。なぜなら、人は自分がイメージできないことは、行動に移そうとしないし、叶えようとしないからです。

例えば、ソフトバンクの孫正義氏が創業当初、みかん箱に乗って数人の社員を前に「我社は豆腐屋のように売上を『一丁、二丁』と数えられるようになる」と語った逸話があります。当時の彼にとって、すでに売上数兆円企業のトップになっている未来の方が、目の前の「みかん箱に乗っている今」よりもはるかに強い臨場感を伴い、それが彼の新しいコンフォートゾーンになっていたはずです。まるで、ムキムキの体を目指す人が、すでにムキムキになっている自分をイメージしてワクワクし、その状態が当たり前になるまで筋トレを続けるように、ゴールした自分を「演じる」ことで、あなたの「普通」の基準を上げていくのです。

ステップ4:恐怖を乗り越え、最初の一歩を踏み出す

最後のステップは、設定したゴールを達成するために**「何を立ち、何を始めるのか」を具体的に決め、行動に移すこと**です。やるべきこと、そしてやらない方がいいことを明確にし、それを「いつから始めるか」まで決めて、カレンダーに予定を書き込みましょう。

例えば、「5月21日から転職活動を始める」「今の会社を辞める決断をする」「婚活サービスに登録する」といった具体的な行動です。そして、その日になったら、どれだけ怖くても、泣いても笑っても行動するのです。

正直に申し上げますと、これはとても怖いことです。ホメオスタシスが強く働き、「実家にいたい」「地元最高」「やっぱり引きこもろう」と、心の中で強く思うでしょう。私たちがこれまで、理想がぼんやりと分かっていながら行動に移せなかったのは、0歳から21歳までに身につけた「思い込み」が邪魔していることも少なくありません。自分のビジネスを始めたいけれど会社を辞めるのが怖い、結婚したいけれど恥ずかしい、傷つきたくない、恥をかくのが怖い…誰もが行動できない理由を抱えています。

しかし、どんなに怖くても、自分の目指す方向へ一歩踏み出すことでしか、人生は変えられません。実際に行動できる人はほんの一握りです。だからこそ、コーチのような存在が重要になります。誰かに「○月○日にこれをやります」と宣言することで、「やらなければ格好がつかない」という心理が働き、自分を律する力となるのです。

もちろん、コーチに宣言したからといって、能力が上がるわけではありませんし、挑戦すれば当然失敗することもあります。転べば痛いですし、後悔することもあるでしょう。自分の生きたい人生を諦め、怖いことから一生逃げ続ける人生も一つの選択肢です。しかし、もしあなたが本気で今の自分や人生を変えたいと願うなら、声が震えても、足がすくんでとしても、決断し、最初の小さな一歩を踏み出すしかないのです。

変化を受け入れ、新しい「快適」を築く脳の適応力

ここまでご紹介した4つのステップを実践し、たとえどんなに怖くても勇気を出してゴールに向かって新しい挑戦や行動を一歩ずつ続けていくと、最初は戸惑うかもしれません。しかし、少しずつ、その状況に慣れていくはずです。そして、それがあなたの新しい「コンフォートゾーン」、つまり心地よいと感じる「当たり前の状態」になっていくのです。

分かりやすい例で言えば、最初は一人暮らしがすごく嫌だったとしても、2〜3年も続ければすっかり慣れて、むしろ一人でいる方が快適に感じるようになるでしょう。実家で親と暮らすなんて考えられない、と感じる人もいるかもしれませんね。

このように、新しい行動を続けることで、脳が無意識レベルで「これが普通の状態なのだ」と学習します。その結果、新しい行動や生き方が心地よく感じられるようになるのです。これは仕事、海外生活、早起き、筋トレ、婚活、どんなことにも当てはまります。

「自分を変える勇気さえあれば、あなたはどこまでも行けます」。この言葉は、本書の最後に書かれているメッセージです。あなたの脳には、新しい環境に適応し、自分自身を書き換えていく素晴らしい能力が備わっています。

まとめ:知識を定着させる最後のインプット

今回の記事では、私たちが「変わりたいのに変われない」と感じるメカニズムと、それを乗り越えて新しい自分に出会うための具体的な方法を解説しました。ここで、特に覚えておいていただきたいポイントをまとめます。

  • 現状維持の本能「ホメオスタシス」: 人間には変化を避けて現状を保とうとする強力な本能「ホメオスタシス」が備わっています。急な変化は、この本能によって元の快適な状態に引き戻されがちです。
  • 無意識の支配: 私たちの意思決定の95%は無意識によって行われています。意識的に「変わりたい」と願っても、無意識が現状維持を望めば、私たちは変われない選択をしてしまうのです。
  • 無意識は書き換え可能: 無意識は、生まれつきのもの(先天性)と、0歳から21歳までの経験で形成される「思い込み」(後天性)の2種類からできています。この後天的な無意識は、時間をかければ書き換えることが可能です。
  • 変化を促す4つのステップ:
    1. 本当に変わりたいかを決める: 変化の苦しさを乗り越える決意が最初の一歩です。
    2. 無意識の癖を知る自己理解: 無意識に避けていること、ついやってしまうこと、うまくいったことを振り返り、自分を深く理解します。
    3. 未来をリアルに描くゴール設定: 今の自分では到達できない、しかし「臨場感」を持ってリアルにイメージできるワクワクするようなゴールを設定します。
    4. 恐怖を乗り越え行動する: ゴール達成のために「何を立ち、何を始めるか」を具体的に決め、怖くても最初の一歩を踏み出します。
  • 脳の適応力: 新しい行動を継続することで、脳は「これが普通の状態だ」と学習し、その環境を心地よいと感じるようになります。このプロセスを通じて、あなたの「普通」や「無意識」も書き換わり、真の変化が起こるのです。

「自分を変える」ことは、決して簡単なことではありませんが、あなたの脳には、変化を受け入れ、新しい「快適」を築き上げていく素晴らしい能力が備わっています。この記事が、あなたが理想の自分に近づくための羅針盤となり、何度でも読み返しては新たな発見を得られるような、記憶に定着する備忘録となることを心から願っています。さあ、あなたも「変わりたい」という純粋な願いを、今日から現実へと変える最初の一歩を踏み出してみませんか?

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